近年の情報化社会の発展は目覚ましく、iPhoneやスマートフォンに代表されるモバイルシステムの進化は、消費者の情報環境を大きく変えました。企業における経営情報システムもその本質は変わらないものの、コンピュータを取り巻く科学技術の進展に伴い、社内外の「クラウド環境」の構築や、増大する「ビッグデータ」の活用方法が注目されるようになってきました 。
振り返ってみれば、企業情報システムは事務系のデータ処理から業務系の情報処理へと発展していったのは1980年代のころ。さらに2000年ころより、コンピュータの計算能力や記憶容量の画期的な向上により、分析を主眼とした情報系のシステムが発展していったわけです。2000年ころの企業のビジネスプロセスと情報システムの関係性を示した図を作成してみました。
外周の円は、企業のビジネスプロセスについて触れています。企業が事業(例:製造業)をおこなう際には、戦略を立案し、各業務を担当する部門を設置、さらに製品を作り、販売・受注し、製品を届け、費用を回収、その後はメンテナンスを実施するというビジネスフローが形成されます。
当初、サービス部門はもっぱら製品の保守がメインの業務でしたが、コールセンターの進化に伴い、クレーム情報は、やがて次のステージの企業戦略に役立てるようになってきました。このためビジネスサイクルは、周回しながら進化していくという過程をたどっていくことになります。
視点1: 企業内における業務プロセスは、「ビジネスのサプライチェーン」のように円を描いて処理される。
このプロセスにおいて、製造、生産、販売、受発注、物流、財務会計は、密接に関係するクリティカルな業務であることから、「業務系基幹システム」と呼ばれ、MRPやERP、SCMなどのアプリケーションが発展していきました。特に金融取引、株価情報、配送情報などの業務では、正確に素早く更新していく能力が要求されます。
一方で、必要情報を時系列的に蓄積し、顧客の購買傾向や市場動向を分析。マーケティングや販売戦略に活かす「情報系システム」も発展してきました。業務基幹系システムと異なり、データを更新せず蓄積していくところに特徴があります。
この二つのシステムを「時間量」と「情報量」で区分すると、
●業務系システムは「単位時間で多量の最新情報を更新」することから、横軸に位置付け
●情報系システムは「長期間の必要な情報を大量に蓄積」することから、縦軸に配置するとわかりやすくなります。
このふたつのシステムを、企業のビジネスプロセスの中に十字に配置することで、これらの関係性を概観することができるでしょう。
視点2: 情報システムと業務システムの処理時間と処理容量の関係性は、対極に位置する。
これまで、企業の情報システムはテクノロジーの進化により集中と分散を繰り返してきました。現代社会においては、「クラウド」と呼ばれる集中型が主流となってきました。
常にシステムの最新状態を保持することで、効率の向上、投資の軽減を図り、また状況によって社内外の「クラウド環境」を使い分けることで、個人情報、財務情報などクリティカルな情報の秘匿性を高めています。
視点3: ビジネスプロセスの円と、システムを合わせると、社内情報システムや社外からの導入アプリケーションの位置付けが見えてくる。
また記憶容量の増大により、日々更新される業務系データをそのまま情報系データとして蓄積することも可能となってきました。POS、GPS、SNSなどから集まる定型/定性情報、画像や動画などあらゆる情報の集合体ともいえる「ビッグデータ」。AIを活用した分析技術との相乗効果で、現代社会の課題を解決していくようです。その意味で現代社会は、集中型情報基盤の時代といえるのかもしれません。
追記2022/1:しかし、2000年以降のクラウド技術の進展により、これらの企業情報システムは外部クラウド環境に委ねる例が多くなってきました。このことにより人的資源を含めシステムの運用コストが抑えられた反面、情報リスクが高まったことは否めません。またこの2年間のコロナウィルスの蔓延により、クラウド依存の有用性が明らかになってきた昨今、国や自治体での導入も盛んになってくるものと思われます。
時代とテクノロジーの変遷により、形状は変化していくものの、現代社会においては、ビジネスプロセスは円形、情報システムは十文字として見立てることで、全体像を把握することができるようです。見立ては、あくまで主観ですので、他の人には、異なる形状が思い浮かぶかもしれません。
丸に十字といえば、「地球」の惑星記号。横軸は赤道、縦軸は子午線を表します。私の場合、企業情報システムのことを語るとき、頭の中に地球をイメージすることですべてを想い出すことにしています。
視点4: 丸に十字のメタファにより、企業情報システムを日常的にイメージすることができる。