まとめる技術研究所は 世の中のことやものの仕組みを体系化し 快適な情報環境を提案します

ポイントはことの忘れ方


現代情報化社会では、さまざまなメディアを通して多くの知識を得ることができるようになりました。豊富な知識はやがて多くの経験を重ね、新たな知恵を生み出します。新たな知恵は、優れた知能により生かされ数多くの課題の解決を図っていくこといになります。やがてこれらの経験の積み重ねにより「考える知性」が芽生えてくるでしょう。

 

しかし、人間の記憶能力には限界があります。悲しいかな、新たな知識を取り込むたびに、過去の知識は忘れ去ってしまうのです。とはいえ、多くの情報をコンパクトな形にしてイメージとして取り込めば、情報容量は大いに低減できるのではないでしょうか。覚えたことを忘れるのは人間の得意技。どうせ忘れるのであれば「うまく忘れて」しまった方がいい。忘れることを恐れるのではなく、想い出せないことを恐れたほうがいいのです。

 

「いかに覚えるか」よりも、「いかに忘れ、いかに想い出すか」。それは「ことまとめデザイン」で解決できるかもしれません。

▲ことまとめの概念







ことをまとめる要領

社会にはいろいろ理解できない複雑なことがあっても、時間をかけてきちんと説明されればわかることが多いかと思います。多くの人を前にして、図表を示しながらプレゼンテーションする(紐解き図解)ことで、納得する光景はしばしば見受けられますね。しかし、終わってしばらくすると、徐々に記憶が薄れてしまいます。検索すればこれらの情報を引き出すことは可能ですが、再度読み込まなければなりません。でも事前に、重要なポイントを関連ずけて一目でわかるように(まとめ図解)しておけば、困ることはありません。

 

とはいえ、ことあるごとにスマホを手にするのも、環境によっては難しいことから、より素早く記憶を引き出したいものです。そこで、覚えやすいシンプルなモデルをイメージしておけば、これを想い出せばいいわけですから、記憶容量が少なくてすむ、ってわけですね。


状況で変わる図解の用途

「日本の論点2011」(文芸春秋社)の巻末特集「日本の実力」の中に「子どもの学力」という記事がありました。教育の専門家ではないので内容の是非には触れませんが、この例を参考に図解の使い分けについて考えてみましょう。

左右のふたつの図解は、同じ図解でありながら用途が異なるんです。左図は矢印を多用した時系列的な図解であり、これまでの経緯から内容を理解することができるでしょう。一方、右図は全体を捉えた概念的な図解であり、結果を表現しています。内容的には同じであるものの、時間がある人に経緯など詳細を説明する際には左図の「紐解き図解」が、時間がなくが全体の状況を説明する必要があるときには右図の「まとめ図解」が最適です。

 

このように図解の中にも、その目的と用途によって、まとめる形態が異なるんですね。ただし「まとめ図解」は多くの情報を取り除いていることから、人によっては解釈が異なる場合もあるので注意する必要性があります。これは10年前の図解ですが、2020年の新型コロナ流行により仕事環境や教育環境が激変したことから、未来に向けた新たな仕組みをデザインしまければならないものと考えます。

会社あるある

情報を渡す相手は誰?セミナー参加者?それともその後ろにいる人?

時々、このような会話が聞かれます。

セミナーに参加するのは、それを聞く時間のある人。セミナー講師は、その相手の方に理解を深めてもらうために、内容の背景や現状や今後の方向性など、順を追った説明をしていくことになります。聞く側はメモを取るものの、とても全部を覚えきれるものではないでしょう。

 

その後、第三者に話すことになるわけですが、その頃には情報は薄れ、頼りになるのは書き取ったメモと配られた資料のみ。自分で理解したと思っても、第三者に説明できなければ「分かった」とはいえません。私自身は、常に第三者を意識した「まとめ図解」を資料として配布することにしています。


お家あるある

他人に説明して初めて「分かる」ことができる

「子供電話相談室」というラジオ番組があります。この中では、子供たちが質問をするのですが、あまりにも素朴な質問なので回答する先生方も苦笑い。それでもその子供の知識レベルに合わせ賢明に説明します。回答した後、先生方がその理解度を確認するため、便宜上「分かったかなー?」と聞くと、子供達の多くは「分かった」と答えます。本当に理解できたかどうかはわかりません。

その後、電話のおねえさんが聞きますが、「お母さんにちゃんと話せるかなー」と聞く言葉が印象的です。自分で理解しても、他人に話せなければ「分かった」ことになりません。人の話を聞く際には、第三者に話せるよう意識して聞くようにしています。うまく説明できない時に補うのが「図解」。これからの勉強方法に大いに役立つものと考えています。




語る想いをみえる形にする

清里を拠点とするプロゴルファーが、自分の思いを語りました。その思いをスクールの生徒に対してどのように伝えたらよいか。松山英樹に代表される若いトッププレヤーは、体力もあり技も冴えます。しかし意外と弱いのがメンタル面。逆に、経験豊富な年配のゴルファーは年齢とともにメンタル面には強いものの体力は確実に落ちていきます。一方、一般のゴルファーは年齢や体力にかかわらず、非日常的な場所では、プレッシャーを感じるものです。その意味でメンタル面の強化は、一般ゴルファーにとって重要な課題といえるでしょう。

 

と、自分ではわかっていてもどのように伝えるか、それが問題だったのです。そこで、インタビューを通して、レッスンプロが訴求する想いの本質を探り、「心・技・体」という三つの要素の中央に「達成感」があることに気が付いたのです。生徒さんに解説する際は、この三つの輪をイメージすることで、わかりやすい説明ができるようになった、との言葉を頂戴しました。

自然の中で観察力を養う

玉川上水は、江戸時代(1653年)に玉川兄弟により開削された、総延長43kmの上水道だ。羽村の取水堰から、多摩川の新鮮な水を取り込み、江戸の飲料水として供給された。

羽村、福生、昭島、立川、小平、小金井、武蔵野、西東京、三鷹、杉並、世田谷、渋谷、新宿の市区にまたがる露天掘りの上水道は、江戸時代の優れた測量技術を物語る。この玉川上水から、さらに野火止用水など数多くの用水路が分岐され、武蔵野台地の痩せた田畑をうるおしたという。

 

 一方で、かつては上水道であった玉川上水も、現在では、三次処理水がわずかに流れる下水道。あの太宰治が入水した当時とは、全く異なってしまった。玉川上水の影の部分にも陽を当てなければならない。その歴史ある玉川上水側道が、わたしの思考の道だ。


満員の電車に乗り、長い時間をかけ都会の職場に到着したかつての生活とは異次元な世界。ニューヨークのセントラルパークを引きのばしたような延々と続く「水と緑と光」の空間。その中を、朝の日差しを浴びながら、軽やかに歩き走り抜ける。

 

・キャンバスを重そうに運ぶ武蔵美の美術家の卵

・颯爽と風を切り通りすぎる津田塾のお嬢さん方

・メタボを解消すべく、速足で汗を流すご中年

・ママチャリで、朝の買い出しに駆けるご婦人方

・愛犬を囲み談笑する人々、散策を楽しむ老夫婦

 

延々と続く武蔵野の雑木林には、多様な人々が暮らす。人々、地域、歴史、その関係性は奥深い。 自然や人々の生活感を観察することで、発想力が養われるのではないだろうか


構想モデル化と想起発想法

よりよい発想を促すためには、物事に対し知的好奇心をもつことが大切です。好奇心の源泉は体験と知識と環境といえますが、現代社会における情報は、要素還元的(Reductionism)な絞り込みにより検索されることから、ものごとの関係性から生み出される発想力(知恵の醸成)につながることは難しいものと考えます。世の中を全体社会としてとらえるとともに、社会で起こる事象の関係性の学びを知識化することで、よりよい発想のための重要な基盤が出来上がります。

 

図式化された情報は、関係性がコンパクトになるため、直感的に記憶することができます。さらに、古代エジプトのヒエログリフのように情報をメタファー化することで、より鮮明なイメージとして記憶できるので、記憶容量の軽減とともに、記憶の出し入れも容易になります。情報の新たな整理方法といえる「想起発想法」(Abduction)の研究は、学ぶ人々の個性ある発想法に役立ちます。これは「記憶する」ことより、むしろ「想い出す」ことに重点を置いた思考法といえるでしょう。

構想博物館「研究饗宴」にて 2013/8/11




想い出せるならば ものごとは忘れてもいい?

 以前より、「文書、表計算、プレゼンテーションなどのビジネスアプリケーションを覚えるのに、どんなシステムが良いのですか?」という質問を、しばしば受けることがありますが、私は、躊躇せずPowerPointをお勧めしています。

 

2001年に、研究の一環として大学院生向けに「思考環境とMS-Officeアプリケーション」というアンケートを実施しました。その理由は、「Wordで論文を書く人はExcelを好まず、Excelで表計算をする人は文書をExcelを使って書く」ということが奇妙に思えたからです。それは、それで、何ら問題はないのですが。

 この(わたしにとって)不可思議な状況を、SOM(自己組織化マップ)というデータマイニングツールを活用して解明してみました。その結果、「パワーポイントを習得した人は《Word》《Excel》《統合的活用》の潜在的スキルも身につけている」という仮説を思い浮かぶことができました。調査以来、この仮説について実証実験を行っています。

 

その後、4年間(半期に1回計8回)、大学院生の要望に応じて、Wordの裏技やPowerPointの機能メカニズムを中心とした自主開講講座「論文作成のための講座」を実施しました。一日の講義の終了後のあわただしい時間にもかかわらず、多くの院生が参加したことから、少しは役に立ったのかもしれません。

 

2000年あたりから、世界を取り巻く課題はこれまで以上に複雑になってきています。これらの問題を解決するためには、様々な分野の知識を取り入れねばなりません。あふれる情報の整理整頓とともに、知り得た知識を記憶に残す新たな方法の必要性があると考えました。

世界の状況をつかみ取るためには、その前にいろいろな国の文化や歴史、関係性を知ることが重要です。しかし、西洋文化の基礎ともなる「旧約聖書」から「エジプト文明」、さらには「ギリシャ神話」に至るまで、日本文化の礎である「日本神話」や「仏教」などは、工学系の私にとって非常に理解しづらい物語でした。

 

複雑なストーリーは、まず重要な点を抽出しそして不要な情報を捨て整えていくわけですが、全体の関係性を結ぶことで、驚くほど理解しやすくなるわけです。そこで、得意のパワーポイントを使ってギリシャ神話の一覧図(いうなれば地図)が完成しました。Googleなどの検索システムで「ギリシャ神話 図解」のキーワードにて画像検索すると、上位に位置されることことから、数多くの方々が関心を持っているものと感じています。

 

しかし、私はこの物語マップでさえ、あまりにも情報が多すぎることから、物語全体をすばやく想い出すことができません。

 

そこで、複雑な物語、制度、関係を記憶に残す方法を考案してみました。それは、このマップをイメージとしてとらえ、他の形状(メタファ)に置き換えるということ。そして細かい情報を忘れてしまうことです。「ギリシャ神話」は「王」、「仏教」は、「心」という文字に置き換えることができました。

 

実際には、この文字ですべてが想い出せるわけではありません。しかし、この方法により個人の記憶容量を軽減できることから、脳の記憶の機能を、他の仕事や趣味に使うことができるようにも思います。これは、いうなれば「情報のアナログ的な圧縮と解凍の技術」。

 

覚えた知識は、深い無意識層に置き、そして忘れる。やがて、深い記憶の中で小さな揺らぎが起こり、創発的にアイデアがひらめく、というわけです。「想い出せるならば、忘れてもいい」。そう思うのです。これからの仕事や学習の方法の一つとして、活用されることを期待したいところです。

 

 

AI技術の得意技は、学習することにより演繹法的または帰納法的に答えを引き出すことと考えます。人間の得意技とも思える推量(アブダクション)的な思考法は、ますます複雑化する現代社会の思考法として、今後も注目されていくのかもしれません。


 まとめる技術研究所(Sophia Design Works)は、社会貢献、地域活性化、環境問題、教育などの課題に対して、人々や地域の能力開発を念頭に様々な構想つくりに励んでいます。特に、戦略思考の基盤となる歴史/文化/制度/技術など、現代社会における複雑な事象を紐解き視覚化。新たな活動の概念を発想させることに注力し、次世代の人々や地域の成長に貢献したいと考えています